「ミレーの発奮」

K

2010年3月26日 (金)

ミレー「晩鐘」.jpg

              「人を侵さず人に侵されず」というふうに生きていきたいものですが、組織や社会の中で暮らしていると、やむを得ず言いたくもないことを口にしなければならないことも起きてきます。

 

 以前の職場で、チンタラチンタラ仕事をしている若い人に、「そろそろ君も発奮すべき時期にさしかかっているんじゃないか」というような話をした時のことです。

 

まともに聞いてくれて有難かったのですが、最後に「あのひとついいでしょうか。そのプンプンというのは私に腹を立てているということでしょうか」と言われて、ガクッとなりました。そして、「発奮」などという言葉はもう死語になっているのだなと思いました。

 

私がこの言葉を知ったのは、山本有三氏の『ミレーのハップン(発奮)』という、年少者向けの文章を読んだのがきっかけでした。

 

売れない画家だったミレーは、心ならずも裸体画を描いて糊口をしのいでいました。ある日、自分の作品が出ている画廊の前に立っていた時のこと。隣で自分の画を見ているた男たちの会話が、彼の耳に飛び込んできました。

 

「ミレー?聞かない名前だな。どんな画家なんだい」「女の汚い裸ばかり描いている男さ」 

 

それを聞いたミレーは直ちにパリを離れ、念願としていた農村の暮らしを描く道に突き進んだというのです。 

 

先日、NYのメトロポリタン美術館で久しぶりにミレーの画に接して、大昔に読んだこの文章のことを思い出しました。

この世の中、きれいなことばかりは言っていられないのですから、せめて少年の時は感動とか友情とか、そうしたことを描いた文章や作品に接したり導いたりする方がいいのではないか。そんなことを思いました。

 

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